~ 接点なきサポーター ~
*ケンジは涙しながら『テンパタールの月』を朗読するのですが、
観る側も涙が止まりません。
『まんまろの月』という表現がなんとも心地よく心にしみていきます。
○○のひとだし・・のくりかえしも心地よくこころに温かくしみていきます。
ケンジの温かさと、深い悲しみ
そして、ぎこちなくも楽しそうに踊るケンジ、
ケンジの一番の理解者がケンジのそばにいたことは、この上ない幸せだったのでしょうに~
引き離されてしまうふたりが悲しくも愛しいです。
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『テンパタールの月』
トシへ
いま テンパタールの砂漠の空にまんまろな月がのぼった
これからさき 1000万人の死者が出るのだと騒いでいる
たとへ 1000万人が1億人でも 死んでいくのはひとりひとりだ
それは あるひとにとっては イチバンたいせつなひとだし
愛したひとでもあるし 憎んだひとでもあるだろう
この春 桜の散る下で 団子を食べ 抹茶を飲み
夏には 氷あずきを食べようと 約束したひとだし
握手をして 手をふったひとだし
やっと仲直りができたひとかも知れない
トシへ
おまえの命が尽きんとするとき
おまえは苦しさに あらい息をしながらも
誰にも たすけを乞うことはなかった
じぶんの 信仰だけが 救いなのだと
おまえは つよく 砂漠の果てをみつめていたのだ
そんなおまえを ケンジは 涙ひとつ流さずに みとどけていた
おまえの息が 静かになったとき
テンパタールの砂漠も 音ひとつなく
一陣の風すら 吹くのをやめた
トシへ
また逢えるところへいくといい
ケンジもやがてそこへいくだろう
みなも そこに在るだろう
そうしたら そこで みなで ワルツを踊ろう
トシへ
ケンジは おまえにいうだろう
ありがとう と
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かたゆき、カンコ、しみゆき、シンコ。
・・・・キックキックキック、とんとんとん。
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*ケンジとトシはワルツを踊ります。
ケンジのぎこちないけれどたのしそうなダンス・・・
いつのまにかトシは消えています。