中村倫也company〜「金髪青山の破壊力」

〜接点なきサポーター 〜



中村倫也の“金髪”青山の破壊力 『珈琲いかがでしょう』ドラマへの翻案で生まれる余韻
4/20(火) 11:38

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『珈琲いかがでしょう』(c)「珈琲いかがでしょう」製作委員会
「君は? ブレンド? ストレート?」

 中村倫也主演の『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京系)第3話では、人生の味わいがじっくりと引き出される「男子珈琲」と「金魚珈琲」が描かれた。「男子珈琲」は、原作漫画にも登場するエピソード名。だが、その中身はドラマオリジナル脚本へとアレンジされている。ストレートに原作を楽しむもよし、監督やキャストが化学反応を起こしたまさにオリジナルブレンドなドラマを味わうもよし。何層にも渡って沁み入る“珈琲”の余韻が心地よい

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■個性派俳優の素敵なパンチ感
 原作の「男子珈琲」は、少年と老人がコミュニティメンバーの顔色を気にして、仲間はずれにされているキラワレ者な友人との距離感に思い悩む話。一方、ドラマで紡がれたのは、イケてると思っていた自分こそが実はキラワレ者で、ダサい友人のほうがみんなに好かれていたという視点の違いもまた味わい深い。

 そのキラワレ者と友人を演じているのが、戸次重幸と小手伸也というキャスティングもまたグッとくる。戸次が演じる飯田は体型を維持するために毎晩筋肉体操で汗を流す。「ヨン様に似ている」と言われた日からストールスタイルを貫き、加齢臭を気にして香水をつけまくり、現場では仕事ができる自分を演出していく……だが、そのどれもが後輩社員からは「イタい」と見られていたことに気づかされる。ガラガラと崩れていく自分像。その自信喪失な姿が切なくも、むしろ気づけてよかったと思わせる不思議な哀愁を醸し出す。

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 対して、小手が扮する森は中年らしいルックスを「ありのままの自分でいい」と受け入れ、年相応の余裕を身につけた言動で信頼を得ていくキャラクター。ストレートに「イケてる人」とは言われにくいかもしれない。しかし、その中身を知っている人はその場に必要とされる大切な存在として認められる。飯田と森の対比を描くことで、より青山(中村倫也)が淹れるブレンド珈琲が際立つ。

 キリマンジャロやコロンビアのようにストレートに主役級の魅力を放つ人はいる。だが、ジャバロブスタのように単体では「イケてない」と見なされても、ブレンドしたときに“なくてはならない”味わいを引き出す名脇役となる人もいる。似ている誰かの真似ではなく、何かの香りでごまかすのではなく、自分ができることを磨き続けることで、その良さが際立っていく。

 また、ストレートに「イケてる」と言われる人だって、他の強いクセを持つ人たちがいるからこそ、単体で輝くとも言える。誰もがお互いの個性を引き立て合っているのだ。だから、同じところにとどまらず、人々との継続した関係性を絶っている青山はどちらのタイプとも答えることができないのかもしれない。


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■ついに出た、金髪青山の破壊力
 そんな青山が次に行き着いたのは場末のスナック。そこはアケミ(滝藤賢一)がママをしていた。肩を落とした立ち姿、ネイルの先までキラキラに包まれたアケミ姿の滝藤がまた美しい。だが、まだまだ世間の眼差しは厳しいのも現実だ。夜にひっそりと働くことを選んだアケミを、同級生の遠藤(丸山智己)は同情をするのだが、その図はどこか飯田と森とも重なって見える。

 だが、アケミは十分幸せなのだ。その金魚鉢のような小さなお店の中で泳ぐ自分が、何よりも自分らしいと誇りを持って言える。勝手に自分の尺度で他人を判断するなんて、まったくもって余計なお世話なのだ。でも、現実の社会でもついつい記号化されたわかりやすい情報で、人を見てしまうものだ。

 こういう状況にある人は、きっとこうだ。そう決めつけてしまうことで、私たちは人生の味わいが広がる可能性を放棄してしまう。いくつもの出会いや偶然が重なって、あのお店の常連客たちが、珈琲焼酎という飲み方があることを知ったように。小さな小さな居場所だって、入口を広げていれば思わぬ発見が飛び込んでくる。

 それは、青山とアケミの出会いもそう。そしてアケミは青山と初対面ではなかったことを思い出す。それは、アケミがこのお店を開く前のこと。今の穏やかに笑う青山とは別人のような、金髪で真っ黒な瞳をした青山だった。しかし「早く行けよ、ババア」と、乱暴な言葉の中にも、アケミを女性として扱っているからこその「ババア」呼びが、またたまらない。

 青山役を中村倫也で、実写化を熱望した原作ファンは、この変わりっぷりこそが見たかったはずだ。ふわふわと掴みどころのない癒やし系から、人の命を簡単にひねりつぶせるサイコパスまで。この振り幅こそが、まさに役者・中村倫也の唯一無二の味なのだから。

佐藤結衣

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