〜接点なきサポーター 〜
以下は記事引用です。
中村倫也“青山”、人生を変えた一杯に昇天…ファンため息「お顔の種類いくつあるの」<珈琲いかがでしょう>
2021/05/04 11:21ザテレビジョン
中村倫也“青山”、人生を変えた一杯に昇天…ファンため息「お顔の種類いくつあるの」<珈琲いかがでしょう>
中村倫也が主演を務めるドラマ「珈琲いかがでしょう」(毎週月曜夜11:06-11:55、テレビ東京系)の第5話が5月3日に放送された。中村演じる移動珈琲店「たこ珈琲」店主・青山一の過去が明らかになり、視聴者は中村が見せる何種類もの表情に引き込まれた。(以下、ネタバレがあります)
■ワゴンに乗り込んだぺいに顔を曇らせる青山
「珈琲いかがでしょう」は店主・青山一(中村)がさりげない言葉で人々を癒やす、優しくもほろ苦い“人情コーヒー群像劇”。第5話では、青山の過去を描く「ほるもん珈琲」と、“ぺい”こと杉三平(磯村勇斗)の初恋を描いた「初恋珈琲」の2編が放送された。
ぺい(磯村)が目の前に現れ、ワゴン車の中で青ざめた青山。ぺいは、垣根(夏帆)に青山の元仕事仲間だと自己紹介して「静かなところで3人で話そう」と提案した。
青山の運転で移動中、垣根から青山の前職について尋ねられたぺいは、「強いて言えば清掃業」と答えるが、実際の青山は垣根の想像にも及ばないような人生を歩んでいた。
■どん底の青山が珈琲の師匠と出会う
血や泥にまみれながら“清掃業”をしていた当時、金髪姿の青山の目は死んだように輝きを失っていた。ヤクザの手下として人を殴り、金をもらって生きていた青山は、泥水のようにまずい珈琲の味しか知らなかった。
ところがある日、ホームレスのたこ(光石研)と出会い、一杯の珈琲を入れてもらって青山の人生は一変する。「ゴミでも丁寧に磨けば、大抵のものは何とかなる」と語るたこは、高架下で貧しく暮らしながらも、とびきりの珈琲を一滴ずつゆっくりと抽出して、極上の一杯を楽しむ生活を送っていた。
青山は、たこに入れてもらった珈琲を飲み、その香りと美味しさに、うっとりと心を奪われる。まさに人生を変える一杯と出会い、青山はたこから珈琲のいろはを学ぶようになって改心したのだ。
■金髪で人を殴る目、珈琲を味わう姿…さまざまな顔で魅了
青山の過去を知った視聴者はSNSなどに感想を寄せ、「まったく目が離せない回だった」「珈琲屋さんの過去切なかったな」と衝撃を覚えた。
一方で「金髪時代もかっこよす」「演技うますぎるってば」「あんな目で人を殴ったかと思えば、あんなお顔で珈琲に酔いしれる倫也が愛おしい…」「我らが中村倫也の魅力が詰め込まれていた」など、中村の見せるさまざまな表情に改めてびっくりする人も。今作で中村は、飲むたびに味が変わる魅力的な一杯さながらの役者であることを証明している。
次回、5月10日(月)の第6話は、ホームレスのたこに弟子入りした青山が各地を巡る本当の理由を垣根に語る「たこ珈琲」を放送。
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文=佐藤結衣
2021.05.04 14:30
「珈琲に出会えたとき、世界が変わった気がしました」。夢中になれるもの、生きがいと呼べるもの、どうしようもない日々から引きずり出されるほど没頭できるもの……。たった1杯の珈琲が、誰かにとってはそれが人生を変える分岐になる。
これまでも甘くて苦い様々な人生を描いてきた『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京系)では、ついに謎多き青山(中村倫也)の、そして執拗に青山を追っていたぺい(磯村勇斗)の生き様が紐解かれる。現在の甘い眼差しと過去の厳しい表情を使い分ける青山と、絶望と愛嬌をあわせ持つぺい。そんな2人を演じる中村と磯村が、演技力でぶつかり合う珠玉の1話となった。
珈琲に救われた青山と、救われなかったぺい
今回淹れられたのは、原作漫画に沿った「ほるもん珈琲」とドラマオリジナルの「初恋珈琲」だ。裏社会で汚れ仕事を引き受けていた青山とぺいのコンビ。手にかける人を「ほるもん(放るもん)」だと教わり、ゴミとして次々に始末していった。
「ほるもん」と「ほらんもん」。彼らにとって、その差はよくわからない。ただ、言われるがままに仕事をする日々。きっと、いつかは自分も「ほるもん」と呼ばれる側になる。いや、もうすでに社会からはゴミだとみなされるクズなのかもしれないという悲しみを胸に秘めながら。
しかし、ぺいにとってはそんな底辺とも言える生活の中でも、青山に出会えたことが一つの希望だった。いろいろなものが欠落し、光が一つも差さないような、常軌を逸した真っ黒な目の青山に「一生ついていく」と痺れたことも。
しかし、青山のその目は珈琲と出会ってから徐々に変わってしまう。ぺいもホームレスのたこ(光石研)が淹れた同じ珈琲を味わったはずだった。青山の人生を変えたという珈琲を。しかし、ぺいには自動販売機の珈琲と、たこの珈琲との違いがわからない。
同じように底辺の日々を過ごし、同じように社会のはみ出しものとして生きていくんだと思っていた青山が救われ、置いてけぼりにされたぺい。自分だけが救われなかった。それは、救いが見えなかったときよりも、よっぽど残酷な現実だ。
「この人、ミョーなカルト宗教にハマって。“珈琲”っつう宗教」というぺいの言葉に、改めて青山の変わりっぷりと、ぺいの寂しさがにじみ出る。自分にはわからなかったものに夢中になる青山を見て、ぺいがどれほどその存在を遠くに感じてしまったのかを。
2021.05.04 14:30
ぺいの中にある「赤」と「黒」
ドラマオリジナルの「初恋珈琲」を描くことによって、ぺいという人となりがより浮き彫りになっていった。青山を逃がすために自らの血を流すことにしたぺい。意識が朦朧とする中、その真っ赤な血を眺めながら初恋の「あの子」のランドセルを思い出すのだ。
「赤」は、ぺいにとって小さな愛を感じた象徴の色なのかもしれない。「あの子」の家に呼ばれて、一緒に食べた手作りの珈琲ゼリー。その上に乗っていた真っ赤なさくらんぼは、「あの子」が愛情をたっぷり受けて育ってきた証だ。親に殴られて育った自分には、やっぱり珈琲ゼリーのおいしさはわからない。憧れて少しでも近づきたくて、でも近づくほどに自分との生まれの違いを見せつけられて。恋をした喜びと叶わない想いの寂しさを行き来した初恋。
それが決定的になったのが、時を経て再会したときだった。ブラック珈琲を「美味しい」といって飲む「あの子」と、大人になってもそのうまさがわからないぺい。すでに裏社会に足を踏み入れていたぺいにとって、その時間は純粋に初恋が実らなかったという事実よりも、育ちの悪さが生んだ分岐の大きさ、その残酷さを実感させるものだったのだろう。
そんな物悲しいぺいの顔を見逃さなかったのは、青山だった。そして「寂しさが紛れる」と言って差し出したのは、赤いイチゴのイラストが施されたイチゴミルクだ。ぺいがこれまで青山を追いながら飴をなめるシーンを思い出す。青山が去り、憎しみや怒りよりも、寂しさが彼を包んでいたという切なさと同時に。
自分と同じところで沈んでいくはずだった青山を連れて行ってしまった真っ黒な珈琲。青山の金髪は、いつの間にか黒髪となり、自分とはもう随分遠く離れた生活を送っているのがわかる。そして、最もぺいにとって屈辱的だったのは、その青山の淹れた珈琲によって自分以外の人たちが「救われている」という事実だったのではないか。
冷たい世の中で数少ない愛を感じられた「赤」と、何度も絶望しながらそれでも“救われたい”と渇望してきた「黒」。ぺいの中にある印象的な2色は、どこか鮮血とどす黒く固まるかさぶたにもかさなる。もしかしたら、青山をかばうために自ら足を刺して流したぺいの赤い血は、ぺいができる最大限の愛情表現だったのかもしれない。そうして青山の危機を助けることで、初めて「救われた」感覚を得られたのではないか。
誰かにきっかけをもらい、何かにハマることだけが「救われる」タイミングではない。きっと青山も、美味しい珈琲と出会ったからではなく、そのあと多くの人にそれを提供したからこそ「人生が変わった」「救われた」と思えているように。「自分が誰かの役に立った」という喜びこそが生きがいであり、人生の醍醐味なのだろう。
■放送情報
『珈琲いかがでしょう』
テレビ東京系にて、毎週月曜23:06~23:55放送
出演:中村倫也、夏帆、磯村勇斗、光石研ほか
第4話~:渡辺大
第6話~:宮世琉弥、鶴見辰吾
第7話~:長野蒼大
第8話ゲスト:市毛良枝、宮野陽名、前田旺志郎、森迫永依
原作:コナリミサト『珈琲いかがでしょう』(マッグガーデン刊)
監督・脚本:荻上直子
監督:森義隆、小路紘史
音楽:HAKASE-SUN
オープニングテーマ:「エル・フエゴ(ザ・炎)」小沢健二(Virgin Music/UNIVERSAL MUSIC)
エンディングテーマ:「CHAIN」Nulbarich(ビクターエンタテインメント)
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:合田知弘(テレビ東京)、森田昇(テレビ東京)、山田雅子(アスミック・エース)、平部隆明(ホリプロ)
制作:テレビ東京/アスミック・エース
制作協力:ホリプロ
製作著作:「珈琲いかがでしょう」製作委員会
(c)「珈琲いかがでしょう」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/coffee_ikaga/
公式Twitter:@tx_coffee
公式Instagram:tx_coffee_ikaga
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FEATURE
【宮世琉弥】テレビ東京系『珈琲いかがでしょう』丁寧に、誠実に、描かれた“ぼっちゃん”の声を隈なく聞いて―
2021年5月5日
宮世琉弥 テレビ東京系『珈琲いかがでしょう』 丁寧に、誠実に、描かれた “ぼっちゃん”の声を隈なく聞いて― 荻上直子監督の描く世界には〈救い〉がある、といつも思っていた。忙しなく進み続ける現代において個人的な“正義”や“ […]
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2021年春ドラマ21作を視聴率無視でガチ採点! 最高評価は『コタロー』『半径5メートル』
2021/05/04 11:30
著者:木村隆志
目次
1
中村倫也のハマりぶりにも注目『珈琲いかがでしょう』
■『イチケイのカラス』 月曜21時~ フジ系
■『きれいのくに』 月曜22時45分~ NHK
■『珈琲いかがでしょう』 月曜23時6分~ テレ東系
■『大豆田とわ子と三人の元夫』 火曜21時~ カンテレ・フジ系
■『着飾る恋には理由があって』 火曜22時~ TBS系
■『恋はDeepに』 水曜22時~ 日テレ系
■『桜の塔』 木曜21時~ テレ朝系
2
演技巧者ぞろい『半径5メートル』
■『レンアイ漫画家』 木曜22時~ フジ系
■『カラフラブル~ジェンダーレス男子に愛されています。~』 木曜23時59分~ 読売テレビ・日テレ系
■『半径5メートル』 金曜22時~ NHK
■『リコカツ』 金曜22時~ TBS系
■『あのときキスしておけば』 金曜23時15分~ テレ朝系
■『生きるとか死ぬとか父親とか』 金曜24時12分~ テレ東系
■『今ここにある危機とぼくの好感度について』 土曜21時~ NHK
3
5歳児の言葉に涙を誘われる『コタローは1人暮らし』
■『コントが始まる』 土曜22時~ 日テレ系
■『泣くな研修医』 土曜23時~ テレ朝系
■『私の夫は冷凍庫に眠っている』 土曜23時25分~ テレ東系
■『コタローは1人暮らし』 土曜23時30分~ テレ朝系
■『最高のオバハン 中島ハルコ』 土曜23時40分~ 東海テレビ・フジ系
■『ドラゴン桜』 日曜21時~ TBS系
■『ネメシス』 日曜22時30分~ 日テレ系
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主要21作がそろった2021年の春ドラマ。今回もドラマ解説者の木村隆志が、全新作の初回放送をウォッチ。俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視!」したガチンコでオススメ作品を探っていく。
別記事(2021年春ドラマ21作の傾向分析! オススメ1位は『コタローは1人暮らし』) において、2021年春ドラマの主な傾向を「オリジナルVS原作アレンジ」「ドラマは23時台の時代へ」の2つと分析。
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おすすめドラマとして、『コタローは1人暮らし』(テレ朝系 土曜23時30分)、『コントが始まる』(日テレ系 土曜22時)、『半径5メートル』(NHK 金曜22時)、『珈琲いかがでしょう』(テレ東系 月曜23時6分)、『今ここにある危機とぼくの好感度について』(NHK 土曜21時)の5作を選んだ。
本記事では、それらを含む全作品のショートレビューと、目安の採点(3点満点)を挙げていく。
■『イチケイのカラス』 月曜21時~ フジ系
出演者:竹野内豊、黒木華、新田真剣佑、小日向文世ほか
寸評:原作の主人公を変え、性格を変え、エピソードまで変える大胆アレンジ。ただ確信犯的に『HERO』に寄せた分、「初の裁判官ドラマ」という魅力が薄れた。これほど脚色するならオリジナルでよかったのでは。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】
■『きれいのくに』 月曜22時45分~ NHK
出演者:吉田羊、稲垣吾郎、青木柚、見上愛、岡本夏美ほか
寸評:ファンタジーという言葉ではくくれない超難解な物語。意味不明なのに引かれてしまうのは、説明過多なドラマが多い反動で新しく見えるからだろう。大人と高校生、各俳優の静かな熱演は見逃せない。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】
■『珈琲いかがでしょう』 月曜23時6分~ テレ東系
中村倫也 撮影:辰根東醐
出演者:中村倫也、夏帆、磯村勇斗ほか
寸評:中村のハマりぶりはもちろん各話のゲストにじっくり演技をさせる荻上直子の脚本・演出は余韻たっぷりで映画『かもめ食堂』を思い出した人も多いのでは。主人公の過去も気になり、最後まで楽しめそう。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】
■『大豆田とわ子と三人の元夫』 火曜21時~ カンテレ・フジ系
出演者:松たか子、岡田将生、松田龍平、角田晃広ほか
寸評:いかにも坂元裕二の脚本で、随所にテクニックを感じる一方、人物のクセが強く、冗舌すぎるため、メリハリに欠ける印象も。テーマと見せ場の不明瞭さも含めて、好き嫌いがはっきり分かれてしまう作品。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】
■『着飾る恋には理由があって』 火曜22時~ TBS系
出演者:川口春奈、横浜流星、丸山隆平ほか
寸評:20代の若手主演とオリジナルのラブコメで攻め続け、しかも胸キュンから徐々に幅を広げる火曜ドラマ。インフルエンサー、ミニマリスト、表参道でルームシェアと浮世離れな設定で共感を集められるか。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】
■『恋はDeepに』 水曜22時~ 日テレ系
出演者:石原さとみ、綾野剛、大谷亮平ほか
寸評:「海を守りたい」vs「海を開発したい」という禁断の恋も、におわせまくる人魚風のシーンも、序盤はキュンやバズにつなげられていない。主演2人の年齢層にド真ん中のラブコメはミスマッチ感も。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】
■『桜の塔』 木曜21時~ テレ朝系
玉木宏 撮影:蔦野裕
出演者:玉木宏、広末涼子、椎名桔平ほか
寸評:テレビ朝日らしい一話完結の刑事ドラマフォーマットを捨て、警視総監を目指す人間ドラマにフィーチャー。同局の中では新しいが、他局にしてみれば今さらで、当枠を支えてきた視聴者の支持も微妙か。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆】
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【ネタバレ】垣根が知った青山とぺいの過去とは
エンタテインメント2021.05.05
Paravi(パラビ)視聴ページ
これまで、メインキャストでありながら一堂に会することはなかった中村倫也演じる青山、夏帆演じる垣根、磯村勇斗演じるぺいがようやく集った第5話。いつもの癒し要素は少なめで、青山の凄絶な過去と、中村倫也が魅せる様々な表情にひたすら息を呑む回だった。そして、これまで視聴者を翻弄してきた危なげな男ぺいの人生と、「俺の兄貴」青山への切なる思いに心を震わせずにはいられなかった。
1杯目の「ほるもん珈琲」の由来は、「昔は食えねえってゴミとして放るもんだったんだぞ。関西弁で捨てるもんっていう意味だ」と、焼き肉屋でホルモンについて語る花菱(渡辺大)の言葉からきている。「依頼者様がいらないって判断したゴミをきれいにきれいに片づける」血生臭い「清掃業」をしていた青山が行ってきたことが「放る(捨てる)」ことだったとしたら、2杯目の「初恋珈琲」で青山とぺいが出会ったホームレスのたこ(光石研)は、「ゴミでも丁寧に磨けば、大抵のものがなんとかなる」という言葉からもわかるように、「拾う」ことの大切さを知る男だ。
「放る」ことを生業にする男・青山が、奇跡のような珈琲を淹れる「拾う」男に出会い、ド底辺にいた魂を拾われた。もう一方の男・ぺいは、それをきっかけにみるみるうちに変わっていった青山に置きざりにされて(彼の言葉を借りれば「ほるもんにされて」)、途方に暮れて、寂しい思いを紛らわすために、イチゴミルク味のキャンディを舐めている。
第1話のぺいが、食べ終わったキャンディの包み紙で「青山」という文字を形作れるほど大量にキャンディを食べ散らかしていたのが、かつて青山が言った「寂しい時、口の中入れとくんだ。紛れるから」という言葉からきているのだとしたら、なんと切ないのだろう。青山に言われて、失恋の傷心を紛らわせるために口に入れたキャンディの甘さに、少し前に飲んだ珈琲の苦さを和らげる効果も相まって、まるで萎んだ風船が膨らんでいくような表情をするぺいがどうにも愛おしかった。
1杯目2杯目を通して描かれるのは、ぺいの「変われない」悲劇だ。第4話で描かれた、青山とゴンザ(一ノ瀬ワタル)を変えた5年という歳月に対しても、彼は疎外感を抱えている。「その頃にはもう人生にしっかり絶望していた」小学生の頃から、彼はずっと変われなかった。もっと言えば、変わる機会を与えられなかったのだろう。
そしてなにより、彼から、初恋の人ひとみ(駒井蓮)と、尊敬する兄貴・青山という、大好きな人たちを「絶対に手が届かない遠くに」連れて行ってしまったのは、他ならぬ「珈琲」だった。
彼は珈琲の味が分からない。過去の青山が仕事終わりに「一区切りつける」ために飲んでいる自動販売機の珈琲は「まじ泥水」な味だし、青山の運命を変えた、ホームレスのたこの淹れたとびっきりの珈琲の味も、到底理解することはできなかった。
また、小学生の時、ひとみの家でご馳走になった生クリームたっぷりのコーヒーゼリーは忘れられない味だが、大人になったひとみが「美味しい」と言って飲んだ800円のブラックコーヒーは意味がわからないほど苦かった。
「俺は馬鹿だから」と何かにつけて彼は言う。「崇高な価値のあるお珈琲」を彼は忌み嫌う。でも、第3話において、飯田(戸次重幸)が馬鹿にしていた「コーヒー牛乳しか飲めない」同僚(小手伸也)が、出世していく姿が描かれていたように、珈琲の味がわからないからぺいの人生は悲しいのではなく、彼が「珈琲」を通して感じてしまう「大切な人との心の距離」が悲しいのである。
『珈琲いかがでしょう』がこれまで描いてきた物語は、青山の淹れた特別な「一杯の珈琲」を飲んで何かが変わりそうな人々の話だった。ある人は一杯のカフェオレで生きる気力を取り戻し(第1話)、ある人は一杯のエスプレッソで、以前は我慢して飲んでいた苦味を美味しいと感じるようになった自分の成長を知った(第2話)。一杯の珈琲が、一人の男の止まっていた時計の針を前に進める手伝いをした(第4話)。だから余計に、変われないぺいは孤独だ。
第6話は、光石研演じるホームレスのたこと出会ってからの青山の話が描かれる。「ほるもん、ほらんもん」と呟きながら、対象を殺す・殺さないを選別し、無感情に相手を殴り続ける時の「いろんなもんが欠落してる、なんも映ってない目」が、どうしてたくさんの人の心を救う優しい眼差しに変わったのか。いよいよ、全ての謎が解き明かされる時である。
(文・藤原奈緒/イラスト・まつもとりえこ)
【第6話(5月10日[月]放送)あらすじ】
「たこ珈琲」
垣根志麻(夏帆)が淹れた珈琲を味わいながら、青山一(中村倫也)は珈琲の道に進むきっかけとなった、ホームレスのたこ(光石研)との出会い、そして青山が珈琲を淹れながら各地を巡っている本当の理由を打ち明ける。
たこの淹れた珈琲に魅了され弟子入りを懇願した若き青山。その申し出を受け入れたたこは、ただ単純に「珈琲を美味しく淹れる」だけではない、青山自身に足りていない何かを気づかせるための修行を始めるのであった。今まで自分が過ごしてきたヤクザな世界とは真反対な、穏やかな日常を過ごしたり、ちょっとしたシアワセに気づくような日々を送る青山。珈琲の腕前が上達していくのと比例するかのように、青山の中でも小さな変化が起き始めていた・・・。
とある雨の日、青山がいつものようにたこの家にいくと、そこには寝込んでいるたこの姿が。たこの淹れた珈琲を飲む青山は「いつか俺も誰かに美味しい珈琲を淹れることができるんだろうか」と問いかける。するとたこは青山に一番必要で大事なものが何なのかを語り始めるのだが・・・。
垣根を家まで送り、ぺい(磯村勇斗)から託されたメモを手掛かりに、本当の目的を果たすべく車を走らせる青山。最終地点に辿り着いたと思ったその時...。
◆番組情報
『珈琲いかがでしょう』
毎週月曜23:06よりテレビ東京系にて放送
出演:中村倫也 夏帆 磯村勇斗 ほか
地上波放送後に動画配信サービス「Paravi」では本編見逃し配信のほかに、Paraviオリジナルストーリー「珈琲"もう一杯"いかがでしょう」を独占配信中
【公式HP】https://www.tv-tokyo.co.jp/coffee_ikaga/
【公式Twitter】@tx_coffee
【公式Instagram】@tx_coffee_ikaga
(C)「珈琲いかがでしょう」製作委員会
Paravi『珈琲いかがでしょう』視聴ページ
Paravi『珈琲“もう一杯”いかがでしょう』視聴ページ
『珈琲いかがでしょう』公式サイト
『珈琲いかがでしょう』主演・中村倫也「静かに豆と向き合う作業が性に合う」
『珈琲いかがでしょう』戸次重幸の懸命さと滝藤賢一のママ姿に釘付け
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