〜接点なきサポーター 〜
“ひねくれていた”中村倫也が昔の写真を 見てビックリ「ヤバい目をしてた…笑」 ーー2020 BEST5
5/4(火) 19:01配信
CREA WEB
“ひねくれていた”中村倫也が昔の写真を 見てビックリ「ヤバい目をしてた…笑」 ーー2020 BEST5
2020年度(2020年4月~2021年3月)にCREA WEBで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。インタビュー部門の第2位は、こちら! (初公開日 2021年2月5日)。
映画『ファーストラヴ』で心に秘めた過去の出来事を抱えながらも、敏腕弁護士として生きる庵野迦葉役を演じた中村倫也さん。
心が荒んでいたという思春期、成果を出さなければと思っていた無名時代、そして「真面目さの角が取れてきた」と語る現在の状況を、等身大の言葉でまっすぐに語っていただきました。
「いろんな現場を経験したことで、変化に柔軟になっているかも」
“ひねくれていた”中村倫也が昔の写真を 見てビックリ「ヤバい目をしてた…笑」 ーー2020 BEST5
――映画『ファーストラヴ』では、「過去が人間を作る」という台詞が印象的でした。中村さんが、「あの経験があって、今がある」と思えることは何ですか?
うーーーーーん、なんでしょうね? (しばし無言)……まあ、「どこの馬の骨ともわからない奴」と思われていた時代……中村倫也が“なかむらりんや”と呼ばれていたような時代には、常に何か成果をあげなければいけないと思っていたんですよね。
でも、さっきの例えでいうと、「入国許可証」がない時代って、何がよくて何が悪いか、その場で求められる芝居の正解が、現場によってことごとく違ったりするんです。
無名の若者が突然現場入りして、芝居を成立させなければいけないことは、それはそれでやりがいがあった。
今はコロナで、いろんな仕組みが変化しようとしている時代ですけど、役者っていうのはものすごくアナログな仕事なんです。ただセリフを覚えて現場に行って覚えてきたセリフを言う。それだけのこと。
僕自身、いろんな立場で、いろんな現場を経験したことで、変化っていうものに柔軟にはなっているかもしれない。
同じ現場なんて一つもないし。かつてOKだったことが別の現場では通用しなかったり、都度都度違うのが当たり前で、その中で工夫することが、自分ができるただ一つのことだった。今思えば貴重な経験でしたね。
――2017年の舞台「怒りをこめてふり返れ」のときは、演劇好きの友人と、「次は絶対に中村倫也がくる!」ってすごく盛り上がったんです。
そうなんですか?
――千秋楽の日、当日券売り場に長蛇の列ができていましたよね。あんな暗い時代の、偏屈なイギリス人の役で、あんなに難解な言葉をいとも容易く操っていて。わかりやすいエンターテインメントとは違いますが、「演劇を観た!」という実感と、非日常的な中のものすごい切実さが胸に迫ってきました。
ありがとうございます。
――役者人生の目標の中には、ああいう難解な役に挑戦することも含まれていたのですか?
「怒りをこめて~」は、1957年ぐらいに書かれた戯曲で、それを古典と言っていいのかわからないですけど、現代劇じゃない翻訳ものをやっていきたいという思いは、俳優になってからだんだんと持ち始めました。
――それはなぜですか?
たぶん、自分がひねくれているからですね(笑)。
この世界に足を踏み入れてから、お客として、いわゆる古典と呼ばれている舞台作品を結構たくさん観てきたんですが、シンプルに「面白かった」と思えたことが少なかったんです。
古典を古典としてやってしまうと、僕らのような世代には、娯楽的に感じられないというか。
「怒り~」も、用語とか時代性とか人種とか宗教とか、いろんな複雑な要素が絡み合っているんですが、僕はひねくれているので、そこに忠実にならずに、自分の感性を大事に演じたっていいじゃないかと思ったんです。
ある意味、古典に対する最大限のリスペクトは、現代人である自分が感じたままに演じることなんじゃないかって。
正直に言うと、自分の中でもあれは「よくやった!」と言える仕事だったんですが、演劇界の重鎮の方からは、「これは『怒りをこめて~』じゃない」という声も聞こえてきて(苦笑)。
でも、それに対しては、「うるせーな」と(笑)。そこで、「そうですよね」と謙遜するのではなくて、「うるせーな」と思ってしまう自分がいたので。
そういう反発心が自分の中にある限りは、古典の翻訳ものをやるのは意味があることなんじゃないかと思ったんですよね。
ひねくれていた”中村倫也が昔の写真を 見てビックリ「ヤバい目をしてた…笑」 ーー2020 BEST5
――“ひねくれている”という言い方をなさっていますが。そういう自分に気づいたのはいつ?
15歳ぐらいですかね。この間実家に帰ったときに、その頃の写真が出てきたんですけど、すごいヤバい目をしていました(笑)。自分でビックリしたんです。
「こいつには話しかけたくねーな」っていう目をしていて、「わ、ここまで心が荒んでたんだ」と思いました。
小学6年生ぐらいまでは、今みたいな、フランクなノリで生きていたんです。それが思春期を経て、なんか色々抱え込んじゃったのか。ひねくれましたね~(笑)。
そこから仕事のない時代を経て、真面目さの角も取れて、だんだん今は幼児返りしているんですけど(笑)。
――演劇人は、いい意味でひねくれている人が多いですよね。古田新太さんもいいひねくれ感がある人ですが。気が合う方だとお聞きしました。
若い頃から、お世話になっている先輩です。11年にKAAT神奈川芸術劇場で上演された「ロッキー・ホラー・ショー」っていうミュージカルを一緒にやらせていただいて。
当時は毎日のように飯に連れていってもらいました。古田さんはものすごいエンターティナーですよね。
――見た目は全然違うけれど、物事をズラして見る視点や、自分の筋を通しながら、置かれている状況を面白がるところは似ているように思います。
光栄です。大先輩を捕まえて「そうですね」とは言えないです(笑)。
――山に登れば登るほど先が遠くなっていく中で、「こういうことをやりたい」というアイデアや、「もっとこうありたい」という向上心は生まれていますか?
うーん、そうですね。この仕事をやっていると、常に潮目があるなってことは感じます。どんなオファーが来るかわからないから、「なるようになるさ」と、常に自分をニュートラルに保ちながら、自分の意見は隠し持っている感じですかね。
結局、自分の想像の範囲内で考えられることはセルフプロデュースについてなので、そこは、自分の頭の中にいろんな目線があります。
いうても、人前に出てやることは全て仕事ですし。色々なものを秤にかけながら、僕なりにあざとく生きていきます(笑)。
中村倫也(なかむら・ともや)
1986年生まれ。東京都出身。2005年俳優デビュー。13年『SPINNING KITE』で映画初主演。コメディからシリアスまで硬軟併せ持つ俳優として活躍。14年には初主演舞台「ヒストリーボーイズ」で第22回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。18年NHK連続テレビ小説「半分、青い。」の朝井正人役で一躍注目され、19年、「凪のお暇」のゴン役で人気を不動のものに。同年、実写版『アラジン』の吹き替えを担当、NHK紅白歌合戦でも美声を披露した。『騙し絵の牙』が公開中。
映画『ファーストラヴ』
女子大生による父親殺害事件。公認心理師の由紀(北川景子)は、事件の取材を依頼され、容疑者・環菜(芳根京子)の心のうちを知るため、彼女と面会を重ねる。事件を担当する弁護士・迦葉(中村倫也)は、由紀の夫・我聞(窪塚洋介)の弟で、由紀と迦葉は大学時代の同窓生だった。環菜と向き合うことで、由紀や迦葉は今まで蓋をしていた自身の過去と向き合うことになる。過去に傷を負った人々はどのように前を向いて進んでいくのか。人が最初に受けるべき愛を描き、見る側の「愛された記憶」を刺激するサスペンス・ミステリー。島本理生の直木賞受賞作、完全映画化。
監督:堤 幸彦脚本:浅野妙子原作:島本理生『ファーストラヴ』(文春文庫)出演:北川景子、中村倫也、芳根京子、木村佳乃、窪塚洋介ほかhttps://firstlove-movie.jp/