〜接点なきサポーター 〜
『RENT』は、まだ観たことがないんです。
どうしても、倫也さんのロジャーを観たいのですが、残念ながらどこにもありません。
以下記事引用です。
インタビュー
中村倫也 (なかむら ともや)
年2~3本のペースで舞台に取り組み続ける中村倫也が、次に挑戦するのは、人気ミュージカル『RENT』。HIVポジティブで元ロックバンドのメインヴォーカル、ガールフレンドの死をきっかけにアパートに引き籠っているロジャーという役だ。インタビューをしたのは、本格的な稽古に入る前だったが、芝居にかける熱い想いを明かしてくれた。
撮影/吉田将史 ヘアメイク/岩田恵美 スタイリスト/伊藤省吾 文/須藤恵梨
衣裳協力:カーディガン\68,250/wjk(wjk ショールーム 03-5768-5213)、Tシャツ\5,040、シューズ\18,690/ヴァンキッシュ(せーの 03-5734-1414)、その他(スタイリスト私物)
プロフィール 中村倫也(なかむら ともや)
1986年12月24日生まれ、東京都出身。05年に映画『七人の弔』でデビュー。初舞台は06年の『黄昏』で、最近では『ロッキーホラーショー』『ハンドダウンキッチン』などに出演。ドラマでも活躍中で『メグたんって魔法つかえるの?』のほか、10月期の連続ドラマ『高校入試』(毎週土曜23:10~・フジテレビ系)に出演。13年上映の舞台『八犬伝』も控えている。
――『RENT』は有名な作品ですが、ご覧になったことはありましたか?
「日本でも何度も上演されているので、作品自体は知っていて、たまたまオーディションの少し前に、友達に勧められて観ていました。初めは映画版で、そのあとブロードウェイのファイナルステージの映像を観て。日本でまたやるならやってみたいなと思ってたら、ちょうどその直後にオーディションの話があることがわかったんです」
――最初に観た時の印象は?
「曲がかっこいい。……とにかく曲がかっこいいなと」
――自分ならこの役を演じたい! って思いながら観てたんですか?
「マークがやりたかったですね。自分が演じている画がすぐにイメージ出来たんです。抱えている環境など、どこか似てるなとも思ったので、マークなら演じられるかもと。なので最初はマーク役でオーディションを受けたんですけど、ロジャーに決まってびっくりしました」
――ロジャー役に決まった時はどう思いましたか?
「3次オーディションくらいの時に、次はロジャー役で来てくれって言われたんです。生まれて初めてです、あんなにキョトンとしたのは。ロジャーは、この役の中では(自分とは)一番遠いと思っていたので、(そんな難しい役)出来ないよって思いました。辞退も考えた程です。でもせっかくだからと背中を押してくれた人がいて、じゃあ出来る限りやってみようと思って次のオーディションに行ったら、OKが出たんです」
――どういう面を見て、ロジャー役にとなったんでしょうね。
「細かくは聞いてないですが、僕がロジャーの歌を歌っている時の感情の流れ方が凄いとは褒められました」
――役作りはどういうところからスタートするのですか?
「ロジャーという存在は、この作品の中でどういう人間なのか、誰に何を与えて行くのか、誰から何をもらっていくのかとか。そういうのは何となくすぐにわかるんです。それはきっと作品を作っていく上でも必要なことだと思うんです。でも、そこから先、実際自分がやるとなった時、自分ではどう出来るか。周りの共演者と交わり、稽古していく中で、どういう感情が芽生えたりするのか、などを考えます。あまり役作りはしないんです。稽古場で感じたことを生かしたり捨てたりしながら、共演者と作って行こうかなと思っていて。今回は、HIVに感染している役なので、そういう自分の知らないことについては考えますけど」
――現段階で、どのようなキャラクターだと捉えてますか?
「縛られちゃっている人ですね。それと最初に観た時は、外国人って恋に落ちるのが早いなと思っていたんですけど、観ていくうちに考えていくうちに、ロックな生き方をしているなと」
――なるほど。外国の方の演出は初めてですか?
「はい。とても楽しみです。異文化コミュニケーションって楽しいですよね」
――英語は得意なんですか?
「喋れないですけど、ノリで(笑)。NYに行ったんですけど、大体通じました」
――NYで『RENT』を観て来たんですよね。
「そうです。賀来(賢人)君と(石田)ニコルちゃんと行って来ました。ほかにも色々な舞台を観ましたね。初海外だったんです」
――本場の舞台はどうでしたか?
「やっぱり楽しいなと。外国人は楽しみ方をわかってるなと思いました。あとはポップな商業演劇みたいな作品が多くて、ポップであることの大切さも感じましたね」
――新たな衝撃はありました?
「お客さんに一番びっくりしました。ちゃんと観ようとしない。勝手に乗っかって楽しんでるんです。それが凄いなと思って。日本人はどうしても真面目に観ちゃうんですよね。この間、ひとりで芝居を観た時に、凄く面白かったんです。外国の翻訳の不条理劇で、出てくる人物がバカばっかりで、会話が面白くて。でも、みんな真面目に観ていて。そんなにちゃんとしていなくてもいいんじゃないかなと思ったんです。その矢先にNYへ行ったら、ビール飲みながらハッハッって観ていて。楽しみ方が上手いなと思いました。(お客さんが楽しめば)劇場全体の波の押し返しみたいなものも鮮明に強くなっていくから、どんどん楽しくなっていくだろうし」
――『RENT』を演じる上で勉強になった点はありましたか?
「自分以外の人が作ったロジャー像を観られたのはよかったです。正直、客として観てる以上、僕の好みがあるから、“ここはそうやっちゃうの?”ってところがあるんです。なので(NYで『RENT』を)観て、それを知られたことは大きかったですね。そういう風にやったらこういう風に観えるんだな、と。色々勉強になりました」
――わりと自分の意見を言うタイプですか?
「基本的には演出家の意見を尊重しますけど、作品と人によります。意地をはったほうがよくなる瞬間もあるんです、不思議なことに。カンパニーのバランスなどを考えますね。構築していく人がいれば、破壊する人もいたほうが、砂の山は大きくなっていくじゃないですか。だから、基本的には素直にですけど、必要に合わせて言うこともあります」
――今回のロジャー役は、ダブルキャストで演じられますよね。相手の演技は気になりますか?
「どうでしょう、ダブルキャストが初めてなので。気になっちゃうとは思いますが、いいなと思うところがあったら、取り入れたらいいし(笑)。とりあえず、歌を頑張らなきゃ」
――歌のシーンがほかの方々より多い気がするんですけど……。
「ロジャーは一番多いみたいで、頑張ります」
――歌やダンスはお得意ですか? 好きですか?
「歌は好きですけど、今は仕事になっちゃったんで……。趣味がひとつ減ったなと思っています」
――しっとりした曲もあれば、ロックテイストや、みんなで並んで歌うゴスペル調のものもあるし、バラエティに富んでますよね。
「凄いですよね。出来るのかなって。とにかく必死にやってます」
――この作品は、日本でも森山未來さんや福士誠治さんが主演を務めて上演されてきました。プレッシャーはありますか?
「僕は日本版を観たことがないんです。ただ、元々ファンの多い作品なので、それだけみなさんは、自分の好みやツボ、ビジョンを持って観に来るんだろうなと思うし。今までの作品を気にしてしまうと、縛られちゃいそうな気がするので、考えないようにしています」
――楽しみにしているシーンはありますか?
「『Light My Candle』という曲を歌うところ。ミミと初めて会って、彼女におちょくられるシーンなんですけど、ああいうのって楽しいですよね。歌が独白じゃないし」
――賀来さんとのシーンも多いと思いますが、共演は初めてですよね。
「はい。彼の印象は……マイペースで、眠そうで、ブラック(笑)」
――かけ合いは上手くいきそうですか?
「今の時点でだいぶいいコミュニケーションが取れてるんで、大丈夫だと思います。上手くいかないとしたら、元々合わないってことで(笑)。上手くいくと思いますよ、そこは心配してないです」
――中村さんは舞台の出演が凄く多いですよね。積極的にたくさんやっていこうと思っているんですか?
「舞台のオファーを頂くことが多いんですよね」
――舞台は昔から好きでしたか?
「はい、仕事を初めてからですけど。それに……舞台でよく褒められるんですよね(笑)。むいてるのかな? って調子にのっちゃうんです」
――褒められて伸びるタイプですか(笑)?
「おごるタイプです(笑)」
――それで出来るならいいことですよね。
「そうですね。僕、子供なんです。子供って、○○君は優しくていい子だねって言われたら、優しくなろうとするじゃないですか。それと一緒で、舞台むいてるねっとか言われたら、フフ♪と思って気分がのってきますね」
――(笑)。中村さんにとって、舞台の魅力とは? 褒められる以外にも、何かやり続ける理由があるのかなと。
「……考えたことなかったな……。なんで僕が舞台をやってるのかってことですよね。……なんででしょう? 観客に生の肉体を通じて、人間性まで見透かされてるような感覚の怖さが楽しいのかもしれません。お客さんの目を怖いと思うと同時にゾクゾクするというか。裸をさらしたほうが強くなるかなっていう思いもあるし」
――これだけ経験があっても怖いですか?
「積み重ねてきたからこそ、怖くなってきました。あとは、稽古時間が長いのも魅力のひとつですかね」
――みんなでひとつのものをガッチリ時間をかけて作るのが好きなんですね。
「そうだと思います。自分のペースを乱されるのが苦手なんです。時間に追われてたりすると緊張しちゃう。だからテレビドラマの現場とかに行くと凄い緊張します」
――舞台は色々観に行くんですか?
「知り合いもいっぱいいるし、スケジュールとお金に余裕があれば行きます。舞台って高いじゃないですか? 15,000円の芝居より、3,000円の芝居のほうが面白かったりもするし、興味があれば大小関係なくなんでも観に行きます」
――純粋に楽しめますか? 自分のお芝居のこととか考えてしまいそうですよね。
「それはありますね。両方の気持ちで観ている感じ。それが本当に邪魔で、なくなればいいなって思うんですけど。不思議なことに、人の芝居は普通に観られるんです。でも、ライティングや美術や音楽や、人の動かし方など、そっちを凄い観ちゃうんですよね」
――演出に興味があるとか?
「ありますけど、出来ないですよ。ただ、そういうことを考えるのが好きなんだろうなって気づきました。1年ぐらい前に」
――ちなみに、映像と舞台だと取り組み方は違いますか?
「カメラが見せたいものと(舞台で)お客さんが観たいものとでは変わってくるんで、その辺のアウトプットの仕方は意識してます。それが一番違うかなと。ただ、そういう風に考えてやっていたんですけど、最近やめました」
――なぜですか?
「自分がどんな芝居をしたいのかなって考えた時に……。うわぁ~、今凄い恥ずかしい話しそうになっちゃった」
――どうぞどうぞ、続けて下さい!
「伝わらないかもしれないですけど……。この仕事を7~8年やらせてもらって、経験を積んだことで、色々身に付いてはいるんですけど、それが本当に邪魔になる時があって。だから今度は、身について重くなってしまったものをはがしていこうかな、というのが自分の中のテーマなんです。なくした分だけ、また新鮮なお肉がついていくと思うので。そして、ちょっとずつ本当に大事なものだけははがさず、いいものがつけられたら、サクサクの天ぷらみたいな上物になれるかなって思っているんです」
――はがしてく作業は難しそうですね。
「つけていくよりは早いかなと思います。どうしても落ちない錆みたいなものは残ってしまうかもしれないけど。どこか目的地に行く時、行きより帰りのほうが早いじゃないですか。つけ方を知ったから、落とし方もなんとなくわかるだろうし。まだテーマにして短いので、これからいっぱい試練があるとは思います」
――元々演技がしたくてこの世界に?
「いえ、スカウトされて養成所に入りました。半年くらいして、誠実なヤツを演じてくれって言われて、誠実について辞書で調べたりもしたけど結局わからなくてデタラメにやったら、それがちょっとウケたんです。それが楽しくて。情けない話、この仕事に覚悟が出来たのは、4年くらいたってからです」
――最後に、役者としての今後の目標を教えて下さい。
「舞台の主演がやりたいです。ひとりでカンパニーの責任を背負ってみたい。僕、基本的にはSなんですよ(笑)。でも、最近の自分の仕事に関する動向を見てると、Mっぽいなって。『RENT』のオーディションを受けた理由も、自分にはちょっと無理だろうと思うことでも、もし受かったら成長出来るかもと思ったところがあるんです。そうやって自分にどんどんハードルを課していこうと思って。わからないことがわかってきたら、またわからないことが出来て、というのが楽しくもあるんです。だから、螺旋階段の同じ階にとどまらないことが目標ですね。同じ景色を観ているようでも、少しずつ上がっていくっていうのが」
――その中に『RENT』がある訳ですね。
「はい、精一杯やります。興味はあるけど…という方がいたら、迷ってるくらいなら自分の目で観て頂きたいです。何事も観ないと何もわからないと思うので。値段の安い学生シートもあるので、是非若い方にも! 若者の葛藤の話なので、共感出来ると思います。誰もがシンパシーを感じられる作品だと思うので観に来て下さい」
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ミュージカル『RENT』
脚本・作詞・音楽/ジョナサン・ラーソン
演出/マイケル・グライフ
日本版リステージ/アンディ・セニョール Jr.
出演/賀来賢人 ジュリアン/中村倫也 石田ニコル/Jennifer ヨウスケ・クロフォード/田中ロウマ TAKE(Skoop On Somebody)/加藤潤一 上木彩矢/ソニン 西国原礼子 Spi ほか
会場&日程/日比谷シアタークリエ<10月30日(火)~12月2日(日)> 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール<12月6日(木)~9日(日)>
96年の初演以来、世界15カ国で各国版の上演、06年には映画化もされた、伝説のブロードウェイ・ミュージカル。映像作家のマーク(賀来賢人)と、元ロックバンドのヴォーカル・ロジャー(ジュリアン/中村倫也)は、古いロフトで暮らしている。夢を追う彼らにお金はなく、家賃(レント)を滞納して、クリスマスイヴなのに電気も暖房も止められてしまう。恋人をエイズで亡くして以来、引きこもり続けているロジャーは、SMクラブのダンサー・ミミ(石田ニコル/Jennifer)と出会うが、彼女もHIVポジティブで……。