〜接点なきサポーター 〜
窪塚さんとのインタビューです。
貴重ですね。
以下は記事引用です。
映画『ファーストラヴ』で“兄弟役”中村倫也&窪塚洋介にインタビュー、2人が語る役者論
第159回直木賞を受賞した島本理生の同名小説を実写化した映画『ファーストラヴ』が、2021年2月11日(木・祝)より公開。主演は北川景子が務める。物語は、「アナウンサー志望の女子大生が父親を刺殺する」という衝撃的な導入から始まるサスペンス・ミステリー。北川が演じる公認心理師・真壁由紀が、事件の容疑者である女子大生の供述に翻弄されながら、その少女の心理、そして事件の真相へと迫る。
脇を固めるのは、主人公・由紀と共に事件の真相を究明する敏腕弁護士・庵野迦葉を演じる中村倫也。そして由紀の夫・真壁我聞を演じる窪塚洋介だ。迦葉と我聞は、血のつながらない兄弟でもあり、2人は物語の重要な鍵を握る。今回はそんな2人に映画『ファーストラヴ』の魅力について、話を聞くことができた。
<映画『ファーストラヴ』について>
完成した映画『ファーストラヴ』を見て、率直な感想を教えてください。
中村:とにかく人に優しくなりたいって思いました。この映画には、いろんなトラウマを抱えた人たちが出てきます。僕は、この作品に出てくる人たちと同じような経験をしたことはないんですけど、不思議と過去の傷口を癒してもらっているような感覚がして。それで他の人にも優しくなれたらなって。
窪塚:全く同じ。
中村:本当ですか?(笑)
窪塚:“全く”同じっていうと嘘になるけど(笑)、中村君の意見、すごくいいなって。個人的な感想としては、まず大前提として、劇中に出てくる人物たちと同じようなトラウマを持つ人が少ない世の中であってほしい。
だけど、もし同じような境遇の人がいたら、この映画を見ることで少しでも希望を持てるような作品になることを願っています。
お2人は、物語のキーマンとなる兄弟を演じました。窪塚さんが兄、中村さんが弟役でしたね。
窪塚:中村君には、お世辞抜きで、初日から“すごいな”って思うことがたくさんあった。
中村:ありがとうございます。クランクインは、窪塚さん、北川さん、僕と、3人が集合するシーンでしたよね。
窪塚さんは、中村さんのどんな演技をすごいと思ったのですか。
窪塚:細かい話ですけど、「そこでそんなまゆげ動くんだ!?」とか。しかも、中村君は、無意識じゃなくて、そこまでちゃんと意識的にやってるんだなって、感心しました。あと、中村君って、どこか捉えどころがなくて、本当に迦葉みたいなんですよ。ポーカーフェイスっていうか。だから、なんの無理もなく迦葉が自分の目の前にいるって思うことができました。
中村さんのおかげで、作品の世界にすんなり入ることができたんですね。中村さんはどうでしたか。
中村:窪塚さんより年下の役者はみんなそうだと思うんですけど、僕も漏れなく窪塚さんに憧れていて。自分が役者になる前からテレビの中にいて、多大なる影響を受けてきた人。僕が窪塚さんに抱いている気持ちは、迦葉が我聞に抱いている気持ちと似ていたから、僕もすんなり役に入れました。
あと、僕自身も兄がいて、実の兄との関係性も、迦葉と我聞に似ていました。それも良かった。実は窪塚さんも、弟がいらっしゃるんですよね。
窪塚:そう、長男で、弟がいるんです。僕はお兄ちゃんタイプ、中村君は弟タイプで、お互い兄弟役に入りやすかったのかもしれない。
<役作りについて>
ご自身が演じた役については、それぞれ、どのように捉えていたのでしょうか。中村さんは、弁護士役でしたね。
中村:迦葉は、殺人事件の容疑者である女子大生・聖山環菜の担当弁護士。弁護士という職業に加えて、由紀や我聞との関係も複雑で、本音を出さず、言葉を飲み込んでいるような印象を受けました。
表面的な部分だけを捉えると冷たい人間のようにも感じるのですが、直接的な言い方で人の傷をえぐることがないように気遣っている部分もあります。なんだかんだ繊細で優しいやつだなと思いました。
本音が見えにくいキャラクターだと。
中村:はい。言葉や行動に本音があらわれない人物なので、心の奥にある複雑な感情をちょっとした目線や呼吸感で表現しなきゃいけないなって。現場で窪塚さんや北川さんと演技をしながら自分の中に生まれてくるものに、繊細にアンテナを立てていました。
窪塚さんは、カメラマン役を演じました。
窪塚:僕が演じる我聞は、由紀を支えながら小さな写真館を営んでいるんですが、世界中の戦地を巡ってきた過去を持つ人物で。僕、脚本を読んで最初に堤監督とお話した時、「寺に行ってきます」って言ったんですよ。
お寺に?
もともと寺が好きでたまに行くんですけど、何かを超越した神聖な場所で役作りしないとだめだって思わせるぐらい、我聞は懐の深い人でした。その人間性が、由紀や迦葉の人生に毒や刺激を与えている。彼は、その場にいるだけで、その境地に至ってしまっている。そんな達観した人物だったので、監督に「寺に行ってきます」と言いました。
映画『ファーストラヴ』の堤幸彦監督は、窪塚さんの代表作である「池袋ウエストゲートパーク」の演出を手掛けたことでも知られていますね。今回は、どんなお話をしましたか。
窪塚:堤監督からは、「何もしないでほしい」という話があって。それがけっこう難しくて、最初は戸惑いました。今までトリッキーな役を演じることが多く、何かをねらって芝居するために現場に行っていたので、何もしないってことに慣れていなかった。でも、それに留まるのも良くないから、現場で自然に生まれてくるものに身を委ねることにしました。そこは中村くんと同じですね。
窪塚さんにとって、我聞は新鮮な役だった。
窪塚:そうですね。最近は穏やかな人物を演じることも多くなって、やっと、僕自身に近い役がくるようになったなと(笑)。そういう役ってできあがった作品を見る瞬間も面白くて、特に『ファーストラヴ』は自分が予期してない動きや言い回しをしていて、自分にはこんな芝居もできるんだって新しい可能性を感じました。ひさしぶりに堤監督のもとで芝居をして、改めて役者の仕事をしっかりやっていきたいと思いましたね。
役者という仕事を改めて見つめ直したいと。これまでもずっと続けてきた役者という仕事に対して、窪塚さん自身は、どんな魅力を感じていますか。
窪塚:自分の人生も、周りの人たちの人生も豊かにしてくれる仕事だなと。役者って、自分のことが好きで、人のことが好きじゃなかったら、やってられない仕事だと思うんです。役者を続けるっていうのは、それをし続けるってことですから、自然とメンタルも豊かになる。
自分自身の役者としての魅力は、どのように捉えていますか。
窪塚:思ったより繊細で、思ったより大胆。容易に同じ箱に入れられない対極のもので、遊んでるっていう感じです。
<役者について:中村倫也編>
中村さんは、役者という仕事についてどう思っていますか。
中村:僕はこの仕事って、常々お恥ずかしい仕事だなって思っているんです。周りの大人たちのように毎日会社に通うのでもなく、子どもの頃の人形劇を大真面目でやっているような感覚というか。でも、そんなお恥ずかしいことを精一杯やるってことが大事なのかなって。
恥ずかしいと言いつつも、真面目に芝居をしている。
中村:はい。『ファーストラヴ』でも気恥ずかしいシーンはあるのですが、そういう場面もしっかり芝居することで、人物像に厚みが出て、作品への理解が深まる。物語の登場人物というのは、何かを抱えていたり、何かが欠落していたりする人がほとんど。そういう人たちを100%理解できないにしろ、許容して、寄り添う努力をしていくことが役作りの作業でもあると考えています。
中村さんはカメレオン俳優とも言われるほど、いろんな役をオファーされていますよね。たくさんの人物に寄り添ってきていると。
中村:そう。僕、けっこう変な役をもらうことが多いんです。そういう人物たちを、許して、認めていく作業を続けているなと。キャスティングして頂く人たちからは、僕自身も変なやつだと思われているかもしれませんね。「一筋縄じゃいかねえぞ、あいつ」みたいな(笑)。
一筋縄はではいかないと感じさせるところが、中村さんの役者としての魅力なのかもしれませんね。
中村:ひと癖、ふた癖あるところが、僕の役者としての特徴なのだろうなと思います。僕としては、どんな役でも、どんな媒体でも、その日頑張って芝居しているだけです。